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このところご無沙汰しておりましたが,サンボー・プレイ・クック遺跡群での修復と研究は着々と進んでいます。

修復工事はサンボー寺院の中央祠堂にて進められています。煉瓦造寺院の四方には砂岩材で組まれた扉が開口しており,その周辺が構造的な弱点となり,大きく壊れています。そのため,現在は寺院正面となる東側の入り口周りの修復工事を進めています。
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オリジナルの部材の破損状況が著しく,修理して再利用することが難しい状況にあったため,新たに扉枠となる砂岩材を加工して,ここに設置する準備をしています。砂岩の新材は加工前の状況で約5トン。加工後にその半分になりましたが,それでも石材を運搬するための大型重機が無い中で,滑車による手作業で全ての石材加工と移動をしています。
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サンボー・プレイ・クック遺跡では新材加工の作業は初めてのことであったため,アンコール遺跡の修復技能員を呼び,現地技能員への技術指導を行ってもらいました。
カンボジア国内での技術移転が大きな取り組みです。

11月中には加工を終えた石材を設置する予定ですが,古代の建設工法さながらに,木造の枠組みを設置し,滑車だけで2トン以上の石材を原位置に正確に設置するのは大変難しい作業となります。

その他,遺跡群内の作業管理・遺物展示施設の改修工事が進んでいます。この建物は半世紀前に造られましたが,クメールルージュの内乱の時代には放置され,その後も文化芸術省が修繕の手を加えてきましたが,このたび大規模な改修工事を行うことになりました。
この施設は,当事業の修復資機材を保管する倉庫,出土遺物の展示などに利用されます。
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遺跡群を解明するための調査も様々な研究者の協力のもとに進められています。最近実施した主要な研究を紹介します。

1.遺跡群の都城内の施設における発掘調査と炭化物の年代測定
発掘調査の結果,都城内ではこれまでで最大規模の周壁を有する施設が発見されました。この施設の構造と建造・利用年代について分析を進めています。
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2.遺跡群内の環濠・溜池等,計20カ所以上におよぶ地点でのボーリング調査による堆積物の採取とそれらの年代分析
遺跡群内の寺院や都城の造営年代を特定するために,付属の溜池等でボーリング調査を行い,採取された堆積物の各種分析を進めています。ボーリング調査は雨季に水面にフロートを浮かべて行いました。乾季にも実施したのですが,地面が固くボーリングスティックを穿孔することが困難であったために,このような方法となりました。また,合わせて音波調査を行い,地下の堆積層の厚さを調べています。現在,国内の各研究機関にてサンプルの分析が進められています。
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121111_06.JPG121111_07.JPG3.遺跡群の古環境の復元研究
年代年輪学と年縞堆積物学にもとづき,遺跡群の古環境の復元研究を進めています。遺跡群内の樹木は樹齢が400年ほどのものが最長で,それ以上遡って分析試料を求めることが困難なため,安定した年縞体積状態が推測される地点にて地下堆積物を採取して分析を進めています。この研究によって,この遺跡群の盛衰を示す歴史的な変遷が古環境変化のイベントに影響を受けている可能性を推測します。
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4.XRFによる煉瓦の組成分析
遺跡群内の寺院の造営年代は,建築・装飾様式と発見されている碑文,そして数少ない中国史料から推定されています。しかしながら,300近く残存する煉瓦造遺構の造営年代を詳細に分析する手掛かりにはなりません。ここでは,遺構を構成する煉瓦の化学組成から,造営時代毎に使用されていた煉瓦がグルーピングされる可能性を求めて,分析を進めています。
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サンボー・プレイ・クック遺跡群での修復工事は住友財団からの支援によって進められています。
また一連の研究は文部科学省科学研究助成により進められています。(一)